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名前

       ftpd — インターネットファイル転送プロトコルサーバ

書式

       ftpd [-AdDhlMPSU] [-T maxtimeout] [-t timeout] [-u mask]

説明

       ftpd  はインターネットファイル転送プロトコルサーバプロセスである。  このサーバは TCP プロトコルを用いて、
       “ftp” サービスの仕様で指定されたポートを listen する。 services(5) を参照すること。

       使用可能なオプションは以下の通りである:

       -A      匿名 ftp 接続、または /etc/ftpchroot にリストされたアカウントによる接続のみを許可する。  他の接続
               は拒否される。

       -d      デバッグ情報が LOG_FTP を使って syslog に書き込まれる。

       -D      このオプションが設定されると、  ftpd は制御端末を切り離してデーモンとなり、FTP ポートへの接続を受
               け付け、 接続を処理するために子プロセスを fork する。 この方式は ftpdinetd(8)  から起動するよ
               りオーバーヘッドが少ないため、 処理量の多いサーバで負荷を低減するのに役立つ。

       -h      サーバがパッシブ接続のために大きい番号の範囲にあるデータポートを使う。  この範囲は <netinet/in.h>
               にある IPPORT_HIFIRSTAUTO  と  IPPORT_HILASTAUTO  で定義される。  OpenBSD  では、この値はそれぞれ
               49152 と 65535 に設定される。

       -l      成功または失敗した各 ftp(1) セッションを syslog の LOG_FTP ファシリティ (facility) を用いてログに
               記録する。  このオプションを  2  つ指定すると、 retrieve (get), store (put), append, delete, make
               directory, remove directory, rename の各操作、 およびそれらの引き数として指定されたファイル名につ
               いてもログに記録する。

       -M      複数ホームモードを有効にする。 匿名ファイル転送のために単に ~ftp を使うのではなく、接続されたクラ
               イアントの IP アドレスから 完全なドメイン名付きのホスト名にマッチする ~ftp 内部にあるディレクトリ
               を使う。

       -p      パッシブモード ftp 接続を無効にする。 大きな番号のポートでの接続を拒否する ファイアーウォールの後
               ろにいる場合に役立つ。 多くの ftp クライアントは始めにパッシブモードを試み、 クライアントが接続す
               るのに指定したポートへの接続を拒否する サーバに対して常にうまく対応する訳ではない。

       -P      正式なポート番号や接続を初期化する PORT コマンドの 正式なアドレスの使用を許可する。  デフォルトで
               は、  ftpd(8) は RFC を守っていないので、 PORT コマンドを予約されていないポート番号で行わせたり、
               接続元のアドレスが同じアドレスである必要がある。 これにより、ローカルマシンと他のローカルマシンに
               対して "FTP バウンス攻撃" を防止することができる。

       -S      このオプションが設定されると、 ftpd は、ファイル /var/log/ftpd がある場合、このファイルに全ての匿
               名ファイル転送についてログを記録する。

       -U      同時に起こる各 ftp(1) セッションは、ファイル /var/run/utmp にログが記録され、 who(1) のようなコマ
               ンドに見えるようにされる。 このオプションは現在のところサポートされておらず、  常に何も表示せずに
               失敗する。

       -T      クライアントが他のタイムアウト時間をリクエストできる。 タイムアウトの最長時間は、 -T オプションを
               使って timeout 秒に設定することができる。 デフォルトのタイムアウト時間は 2 時間である。

       -t      無活動タイムアウト時間を timeout 秒に設定する (デフォルトは 15 分である)。

       -u      デフォルトの umask を 027 から mask に変更する。

       ファイル /etc/nologin は ftp アクセスを不可にするために使われる。 このファイルが存在すると、 はそのファイ
       ル内容を表示して終了する。  ファイル  /etc/ftpwelcome  が存在する場合、 は “ready” メッセージを表示する前
       に、 そのファイルの内容を表示する。 /etc/motd が存在する場合、 はログインが成功した後、そのファイルの内容
       を表示する。 ディレクトリに .message ファイルが存在する場合、  そのディレクトリに入ったときに、このファイ
       ルの内容を表示する。

       ftp  サーバは現在のところ以下の ftp リクエストをサポートしている。 リクエストの文字の大文字小文字は無視さ
       れる。

             リクエスト    説明
             ABOR          直前のコマンドを中断 (abort) する
             ACCT          アカウントを指定する (無視される)
             ALLO          (空の) ストレージを確保する
             APPE          ファイルを追加する
             CDUP          カレントワーキングディレクトリの親ディレクトリを変更する
             CWD           ワーキングディレクトリを変更する
             DELE          ファイルを削除する
             HELP          ヘルプ情報を表示する
             LIST          ディレクトリ中のファイルのリストを表示する (“ls -lgA”)
             MKD           ディレクトリを作成する
             MDTM          ファイルの最終修正時刻を表示する
             MODE          データ転送モードを mode に指定する
             NLST          ディレクトリ中のファイル名リストを表示する
             NOOP          何もしない
             PASS          パスワードを指定する
             PASV          サーバからサーバへの転送の準備をする
             PORT          データ接続ポートを指定する
             PWD           カレントワーキングディレクトリの名前を表示する
             QUIT          セッションを終了する
             REST          不完全だった転送を再開する
             RETR          ファイルを取得する
             RMD           ディレクトリを削除する
             RNFR          名前変更前のファイル名を指定する
             RNTO          名前変更後のファイル名を指定する
             SITE          標準でないコマンド (次のセクションを参照すること)
             SIZE          ファイルのサイズを返す
             STAT          サーバのステータスを返す
             STOR          ファイルを格納する
             STOU          ファイルを他のものと重複のない名前で格納する
             STRU          データ転送構造を structure に指定する
             SYST          サーバシステムのオペレーティングシステムのタイプを表示する
             TYPE          データ転送タイプを type に指定する
             USER          ユーザー名を指定する
             XCUP          カレントワーキングディレクトリの親ディレクトリを変更する (反対される)
             XCWD          ワーキングディレクトリを変更する (反対される)
             XMKD          ディレクトリを作成する (反対される)
             XPWD          カレントワーキングディレクトリの名前を表示する (反対される)
             XRMD          ディレクトリを削除する (反対される)

       以下の標準でないコマンドや UNIX 特有のコマンドは、 SITE リクエストを使うことでサポートされる。

             リクエスト    説明
             UMASK         umask を変更する。例 ``SITE UMASK 002''
             IDLE          アイドルタイマを設定する。例 ``SITE IDLE 60''
             CHMOD         ファイルのモードを指定する。例 ``SITE CHMOD 755 filename''
             HELP          ヘルプ情報を表示する。

       インターネット RFC 959 で規定されている 他の  ftp  リクエストも認識されるが、  今のところ実装されてはいな
       い。 MDTM と SIZE は RFC 959 で規定されていないが、 次に改訂される FTP RFC には登場するだろう。

       ftp   サーバがアクティブなファイル転送プロセスを中断  (abort)  するのは、  ABOR  コマンドの前に、  Telnet
       "Interrupt Process" (IP) シグナルや Telnet "Synch" シグナルが Telnet   ストリーム内にある場合だけである。
       これはインターネット  RFC 959 に記述されている。 データ転送中に STAT コマンドを受け取り、 その前に Telnet
       IP や Synch があった場合、 転送ステータスが返される。

       ftpd は、 csh(1) で使われている  “ファイル名展開”  による変換に基づいて、ファイル名を解釈する。  これによ
       り、ユーザーはメタキャラクタ “*?[]{}~” を利用できる。

       ftpd は 5 つのルールに従ってユーザーの認証をする。

             1.   ログイン名はパスワードデータベース /etc/passwd になければならず、 空のパスワードであってはなら
                  ない。 この場合、あらゆるファイル転送に先だって、 クライアントからパスワードが提供されなければ
                  ならない。  ユーザーが  S/Key のキーを持っている場合、 USER コマンドが成功した際の応答が S/Key
                  チャレンジに含めて送られる。 クライアントは、それに対して PASS  コマンドを使って応答する際に、
                  通常のパスワードと  S/Key のワンタイムパスワードの どちらをつけて応答するかを選択できる。 サー
                  バはどちらのタイプのパスワードを受け取ったかを自動的に判定し、      それに応じて認証を試みる。
                  S/Key 認証についての詳細は skey(1) を参照すること。 S/Key は Bellcore 社の商標である。

             2.   ログイン名はファイル /etc/ftpusers にあってはならない。

             3.   ユーザーは getusershell(3) が返す標準のシェルを持っていなければならない。

             4.   ユーザー名がファイル /etc/ftpchroot にある場合、 “anonymous” アカウントや “ftp” アカウントの場
                  合 (次の項目を参照) と同様に、 セッションのルートディレクトリは chroot(2) によってユーザーのロ
                  グインディレクトリに変更される。  しかし、この場合でもユーザーはパスワードを与える必要がある。
                  この特徴は、完全に匿名なアカウントと完全な特権のあるアカウントの  妥協的な利用を意図している。
                  このアカウントは匿名アカウントとして設定されていなければならない。

             5.   ユーザー名が  “anonymous”  または “ftp” である場合、 匿名 ftp アカウントがパスワードファイルで
                  (ユーザー “ftp” として) 提供されていなければならない。  この場合、ユーザーはどのようなパスワー
                  ドを指定してもログインが許可される  (慣例として、ユーザーの email アドレスがパスワードとして使
                  われる)。

       最後のケースでは、 ftpd は、クライアントのアクセス権を制限するために、特別な評価を行う。  サーバは  “ftp”
       ユーザのホームディレクトリに対して  chroot(2) を実行する。 システムのセキュリティが侵害されないためには、
       “ftp” サブツリーを以下の規則に従って慎重に構築することを推奨する:

             ~ftp      ホームディレクトリを “root” の所有とし、誰も書き込みできないように (モードを 555 に) する
                       こと。

             ~ftp/bin  このディレクトリを “root” の所有とし、誰も書き込みできないように (モードを 511 に) するこ
                       と。 このディレクトリは必要で、 少なくとも静的にリンクされた ls(1) のコピーがなければなら
                       ない。 このディレクトリにあるプログラムのモードは、 111  (実行属性のみ)  でなければならな
                       い。

             ~ftp/etc  このディレクトリを “root” の所有とし、誰も書き込みできないように (モードを 511 に) するこ
                       と。    ls    コマンドが所有者を数字ではなく名前で表示できるようにするために、   ファイル
                       passwd(5) と group(5) が必要である。 passwd のパスワードフィールドは使用されないので、 実
                       際のパスワードを入れてはならない。 ファイル motd が存在すると、ログイン成功後、その内容が
                       表示される。 このファイルはモードが 444 でなければならない。

             ~ftp/pub  このディレクトリのモードを 555 とし、 “root” の所有とすること。  このディレクトリには、伝
                       統的に、ダウンロードのための 公開アクセス可能なファイルが格納される。

ファイル

       /etc/ftpusers    歓迎されない/制限を受けるユーザーのリスト。
       /etc/ftpchroot   chroot しなければならない一般ユーザーのリスト。
       /etc/ftpwelcome  歓迎のメッセージ。
       /etc/motd        ログイン後の歓迎のメッセージ。
       /etc/nologin     表示されて、アクセスが拒否される。
       /var/run/utmp    システム上のユーザーのリスト。
       /var/log/ftpd    匿名ファイル転送のログファイル。

関連項目

       ftp(1), skey(1), who(1), getusershell(3), ftpusers(5), syslogd(8)

バグ

       特権ポート番号を用いてソケットを作成するために、   サーバはスーパーユーザーとして実行しなければならない。
       サーバーはログインしたユーザーの実行ユーザー ID を管理する (使う)。  そして、アドレスをソケットにバインド
       する場合にのみ、 スーパーユーザーに戻る (その権限を使う)。 考えられるセキュリティホールについては、かなり
       綿密に調べたが、 それでも不完全かもしれない。

履歴

       コマンドは 4.2BSD で登場した。

翻訳者謝辞

       この  man ページの翻訳にあたり、 FreeBSD jpman project <http://www.jp.freebsd.org/man-jp/> による翻訳を参
       考にさせていただいた。

Linux NetKit (0.17)                            September 14, 1999                                        FTPD(8)